航空安全シミュレーション

今年に入ってから、航空機の事故が多い。パイロットサイドから見ると、常に事故は死人に口なし、組織保護の傾向があるため、パイロットに責任を押し付けているかのように見える。ただ残念ながら、90年代以降の事故の原因は主に2つだ。

  1. 人間のミス
  2. 予測不可能な事故

人間のミスは、パイロット、整備士、または人間工学的に間違った機械を作ったメーカーまで幅広い。

予測不可能な事故には、後になっても原因不明な機械的物理的電気的な障害によるもの、または天候だ。

これらの要因を追跡することが単に難しいというだけでなく、実は航空機の大きな事故そのものが、試行回数に対して著しく低い確率でしか発生しないことに大きな問題がある。

例えば新規参入の航空会社が低価格でサービス開始したとする。明らかに必要な整備の一部を省き、会社は無理な荷物を詰め込み、パイロットは燃料節約のために無理なルート要求を繰り返していたとする。この場合には明らかに事故の確率が高まっているがまだ十分に小さいため、この航空会社が倒産するまでの1、2年では、事故を起こすには至らない。

こうした競争が繰り返されることで、航空会社の倒産、税金による再生が日常化したのがアメリカで、いよいよ事故が表面化してきたのが今日の航空業界ではないかと懸念する。先の例でいうと、必ずしもマナーの悪いパイロットが自社の事故の確率を高めるだけでなく、どこか別の航空会社にしわ寄せが来てもおかしくはないため、問題は複雑だ。

さらに、突風というのは航空機を操縦する上でもっとも危険な要素のひとつだが、最近の気象ではより突風成分が強くなっているのではないだろうか。例えば平均風速が20メートルだとしても、ガストが+/-10メートルあると、最小で10メートル、最大で30メートルとなり、着陸侵入時の20メートルの変動は楽に失速を誘発する。これは向かい風、追い風、横風、上昇気流、下降気流の全てを含む。

例えば先日広島で起こったヘリコプターの事故だが、突然強い下降流に襲われ、急上昇を試み、建てなおして抜けようとしたところで電線に引っかかったというようなシナリオの方が、単に事前調査も無しに電線が張られている島の間を低空飛行し、さらにそういう場所で急上昇したなどという馬鹿げた話より現実的だ。もしそんなことをしたのなら、海上保安庁のヘリなど空飛ぶ危険物体以外何者でもない。

このように、気象面から見ると明らかに安全サイドに航空業界は移行しなくてはならないのに、実体は逆行している。

もちろん航空会社が過度に保護されるべきだと言っているのではなく、正直危なくて乗れなくなってきているとわたしは思う。


そこでひとつ思うのは、操作、整備、管制の全てのログを収集し、事故が十分な回数発生するまでシミュレーションを継続的に行ったらどうかということだ。社内では不都合な情報を隠すだろうから、第三者機関が監視し、シミュレーションと警告、安全指数の公開を行う。例えばCrush/100Years。100年で何機墜落するかというような指標。もちろんひどい数値の会社でも墜落しないかもしれない。運と価格。どちらにかけるかは乗客次第だ。

まあいきなりそんなことは無理だとしても、手軽に航空機と航空管制をシミュレーションできるようになれば、航空業界に携わる全員ににとって面白いツールになる。実際飛行機に乗ると、例えばキャセイパシフィックのパイロットが香港にアプローチする操作にずいぶん関心したりして、価格以上の安全を感じたりするが、そういうものが目に見えるようになれば、価格だけの競争に陥らないようになるのではないだろうか。