ピアノの音程

ピアノは調律師が調律して、減衰した時に少し音程が上がるということしか音程の変化は無いと思っていたんですが、ちょっと違うのではないでしょうか?

これはキースジャレットのケルンコンサートから、3分過ぎの静かなパートを解析したものです。これを見ると、穏やかにタッチをする場所以外は、ピッチが高くなったり低くなっています。鍵盤を速くたたくとピッチが高いところから始まり、ゆっくりだと低いところという具合に見えます。そっとタッチしているところだけぴったりの音程になっています。

(中央に水平に並んだ49個のボールは、2オクターブ低いラの音から2オクターブ高いラの音まで表していて、上下に素早く動き回るオレンジのターゲットは、上下+-50セントの微妙な音程の変化を表しています)

平均律で調律されたピアノが美しく響く場合がある、というだけでも、そもそもピアノが完全に固定された音程しか出せない楽器だと考えるのは無理があると思っていましたが、やっぱりこのような変動があるのではないでしょうか。

ひょっとすると、数学的に私が間違っているのかもしれないし、本当はピッチの変動はほとんど無いかもしれない。ただあるように聞こえるし、ピアノだってピタゴラス的にも純正律的にも弾けるという方が納得がいく。そうだとすると、ピアノの鍵盤を強くたたく先生は子供達に随分高い音を教えているかもしれないし、家でひっそり鍵盤を叩いて練習していると、低めの音が身に付いてしまうかもしれない。


音というのは、科学的に見れば見るほど、移ろいやすく存在の不確かな、確率的にしか存在しないような代物です。彼の演奏を見ていると、そういうはかないものを、手探りで探しまわっているように見えてきます。