音のイメージ

一体全体、音楽を演奏するイメージって、どうやってするのだろうか?
誰かこのイメージをまとめた人はいないのだろうか?
それともそれは全く表現不可能なものなのだろうか?

クリフォードブラウンとマイルスデイビスは、たぶんイメージがあったんだと思う。ブラウニーは純粋なトランペットの音について。マイルスはバンドについて。

それは、池の水をきれいに保つようなもので、特にマイルスは淀んだ場所をかき混ぜるのがうまかったように思える。


バッハが平均律によって音楽に柔軟性(移調できる)を与えるまで、各調は個性を持っていたという。どういうことかというと、弦で音を出す事を考える場合、ある基準からその長さを倍にしたり半分にしたり、5:3とかの比率にして音を作ったので、どこを基準に楽器を調律するかで音が変化し、結果として各調に個性を持たせたのだった。だから平均律というのは、ある調のある音である生物をぶった切るような乱暴なものに見えたそうだ。

それでは、今では各調に個性は無くなったのだろうか?

私はそうではないと思う。もちろん昔の個性は失われたが、まだ楽器の個性は残っている。ピアノは白鍵と黒鍵で音が違うし、ラッパだってバルブを押さえるパターンが変われば音が変わる。それは微妙に思えるが、明らかな差として残っている。それにもちろん、♯や♭が増えればミスも増えます。


また、各調の音階には重要な役割を持つ音とそうでないのがある。例えば長調(または短調、場合によってはラをトニックと呼ぶ)の音階では、移動ドでいうドの音であるトニック(1)、ファであるサブドミナント(4)、ソであるドミナント(5)が、特に重要な役割を果たしていることが知られている。そしてサブドミナントドミナントへ、ドミナントはトニックへという力が働く。

通常これらの力は強すぎて、使いすぎると童謡とかマーチみたいな音楽になってしまう。繊細な曲は弱い音の個性を引き出す事に成功している。どちらにしても、曲の中の大事な音をどう表現するかと考えると、どの調でやったらいいかが決まるはずだ。これは調自体の個性というよりも、演奏する楽器によるのだと思う。


さあ、そうしてある調である曲を演奏することになったとしよう。何をどうイメージしたらいいのだろうか?

各楽器の細かいイメージは置いておいて、曲自体が持つイメージについて言うと、どうも虹の色を音階に見立てたニュートン色相環がいつも舞い戻ってくる。それを最初の池に例えると、バランスを取るようにあちこちをぶらぶらかき混ぜているように思えるのだ。

例えばEmilyの出だしでは375, 375, 375と続くが、ニュートン色相環のイメージで言うと、緑、バイオレット、青となるのだが、緑とバイオレットに青を混ぜる(加色法)と白になる。そんな風に、曲の中の一塊が、白になるようなバランスを取っているように見えるのだ。時には数小節赤っぽくなっても、そうすると青っぽい数小節で打ち消されることになる。

ソプラノサックスが紫をやり過ぎてバンドがむちゃくちゃになって取り返しがつかなくなったところへ、マイルスが強烈な青緑をぶちこむようなイメージだとも言える。

手元にある楽譜を見ていると、どうもそうじゃないかと思う。トニックはそういう濁りを打ち消す効果もあるように見える。
もう少し具体的に実際の楽譜と色相環を使って検証してみたい。