坊っちゃんの舞台について

夏目漱石の小説「坊っちゃん」は、名前だけなら日本人全員が知っているであろう名作である。ただ源氏物語とかと同じで、では果たして読んだ人がどれだけいるかと言うと、かなり少ないだろう。私自身、この6月、チューリッヒへ向かう飛行機の中で読んだのが初めてであった。それから夏目漱石の大ファンになった。小説も面白いが演説もいい。特に「道楽と職業」や「創作家としての態度」などは、むしろ現代に響くテーマである。

まあそんな夏目漱石の「坊っちゃん」の地名を拾いだして、日本文学地図へ加えてみた。フィクションであるので、特に中学校周辺の地名は実在していない。例えば「かの”ターナー島”がどこか」というような見方は今回行わず、純粋に物語の文字の中から判別できるものに絞った。

中でも面白いと思うのは、明らかに「坊っちゃん」の舞台は松山ではないということだ。その理由は次の二つの文章から明らかである。

  1. (略)四国辺のある中学校で数学の教師が入る。月給は四十円だが、行ってはどうだという相談である。
  2. 二十五万石の城下だって高の知れたものだ。こんな所に住んでご城下だなどと威張ってる人間は可哀想なものだと考えながらくると、いつしか山城屋の前に出た。

逆にこれは明確にある一つの城下町を指している。それは、戦国武将蜂須賀小六の所領、徳島藩二十五万石のことである。

小説の中で明確にされたものは意図あってそうしたもので、明確でないものは意図あって不明瞭にしているわけだから、まあそういう読み方をした方がいいでしょう。