景色を食す

パッと景色が華やかになった。カラフルな傘を差して下校する小学生達だ。風が強いので、前傾姿勢になってしっかり傘を抱えている。前から来た車が軽くパッシングする。何人かは気づいたが、気づかない子もいる。目の前まで来たところでようやく気づき、慌てて逃げる。

それにしても、どうして雨の日はこう気分が湿っぽいのだろうか。どんよりとして面白みの無い灰色の空。雨を浴びて、新緑の生命たちだけが生き生きしているようだ。

食事が私達の体のエネルギーであるように、景色は私達の心のエネルギーではないのか。なんとなく、感覚的に、経験的に、そう知っているような気がする。

雨の日、光が少ない日は、いい写真を撮るのが難しい。本当は画質に差が無いのかもしれない。ただ、私達は雨の日の写真をあまり好きではないだけで。

最近のデジカメにはCCDが搭載されている。ソニーが開発したこのCCDというのは、私達の目と同じような仕組みになっていて、3種類の色を認識することができるそうだ。しかし私達の目にできて、CCDにできないことがある。

それは、色の一貫性を提供することだ。

朝、昼、晩、晴れの日、雨の日、室内など、光によって、実は色というのは変化する。それを、私達の目は自動的に補正して、一貫性のある色で認識させてくれる。こんな雨の日、黄色い傘を差した集団が、白くなったり青くなったりはしないのだ。

自動ではないが、デジカメには同様の機能がついている。ホワイトバランスだ。その瞬間に、白を白として補正してやることで、一貫性を出してやることができるらしい。

息を飲むような景色に出会った時、私達は感動する。私達の目が、それを捕らえようとたくさん仕事をすればするほど、私達は気持ちよくなる。まるで心に栄養が流れ込んでいるように。