音量と音程

全く力まない状態で空気の量だけを徐々に増やしてみる。このとき最も小さい音をレベル1として、最大の音をレベル10とする。ただし、あくまで全く力まないで出る最大の音である。

言い換えると、1の音で開始して、クレッシェンドして10に達してから、デクレッシェンドして1の音に至るロングトーンの練習を、空気の量だけをコントロールしてやる練習だと言える。

このとき、1の音の状態では、音程が20から30セントばかり低い。そこから空気の量が増えるにつれて音程が上がり、10の音の時には逆に20から30セントばかり高くなる。それからまた徐々に下がって、元に戻るという具合だ。

例えばホースを蛇口につけて水を流すと考えたら分かりやすい。蛇口を少しひねった状態だと、ちょろちょろしか水が出ない。蛇口をいっぱいひねると水が勢いよく出る。このように、菅の太さが変化しない場合、そこを流れる流体の量が増加すると速度が増加する。

こうして、管楽器の場合で言うと、音程は音量に比例する。

(音程を変化させずに音量をコントロールするには何かが変化しなくてはならない)

これを、楽器やマウスピースの特性と合わせて考えると面白いことが分かる。例えば中音域が出やすくなっている楽器やマウスピースを使用する場合、同じ空気の量でも中音域では音量が大きくなり、それ以外の場所では音量が小さくなる。これはすなわち、音量を一定に保とうとすると音程が変化するということだ。

マーチンオールドコミッティーは、中音域が出やすい特性があるのではないだろうか。逆にいうと、高音域の抵抗が大きく、かなりのエネルギーがいるが攻めきれればすごくいい音が出る。そしてそこに準備して、そこを基準に音程を下げてくると、出やすい中音域で音が上ずる。本当は空気の量を減らしてやらなくてはならないのに多いまま音程を下げてしまうからだ。

上ずった音にちょっと疲れた時は、チェットベイカーがいい。彼は上から下まで、ほぼ一定のピッチで吹いてくれるから。