音色

しばらく雨です。世界が灰色です。

ところで、音色という言葉があるように、音と色とは密接な関係があります。

「色彩の基礎 芸術と化学」によると、この感覚を利用して、楽譜を色々な記号へ変換する作品が数多く存在するそうです。残念ながらそこで紹介されている作品はウェブ上に存在しませんでしたが、例えば著者の川添氏は次のように書いています。

私たちの五感のうち、その一つの感覚器官が刺激されると、他の感覚器官があたかも反応したかのような現象が起こる場合があり、これを共感覚現象という。
特に、色と音の場合は、音色(timbre または tone color)という言葉があるぐらいで、一般に甲高い声を黄色い声といったりする。

そして例として、

カディンスキーは『抽象芸術論』の中で楽器の音色について述べているが、それをまとめてみると、
黄 次第に高く吹き鳴らされるトランペットの鋭い音色
オレンジ チューバのファンファーレの音色
赤 高く澄んだ歌うヴァイオリン
赤紫 情熱を帯びた中音から低音のチェロの音色
緑 ゆるやかに奏でられるヴァイオリンの落ち着いた中位の音色
明るい青 フルート
暗い青 チェロ。その濃さと深みが増してくるとコントラバスの不思議な音色に似てくる。要するに、深みと荘厳さのある点では、青の響きはパイプオルガンの低音部がもつ音色に比較できる。
紫 オーボエや芦笛の音色
暗い紫 ファゴットの低い音色
白 精神的に無音の休止
ということになる。

さらに、

また、ゲーテは、友人にあてた手紙の中で、チェロをインディゴ、ヴァイオリンをウルトラマリン、オーボエを濃い赤、クラリネットを黄、ホルンを紫という具合にたとえている。

などを挙げています。

これをマンセルなどで考えてみると、灰色というのは、さながら全員がひっそりと音階練習をするオーケストラみたいなものです。


そこで、こういう曇りの日には、色々な楽器で色彩の欠乏を補ってみるといいかもしれません。