マッチ

真っ暗な部屋。マッチをする。シュッ。

パッと、やわらかな、ゆらゆらとした明りに包まれる。その場の空気を一瞬で、まさにシュッ間に変える。

光は、この場合太陽と人口的に作り出す照明の両方だが、人間の中に色を創り出す。この光の加減で、私たちが受ける印象は大きく変わる。ネガティブからポジティブへ、冷徹から熱狂へ、不安から安心へ。

音楽は、言うなればこのマッチだ。シュッと、つまり一音が一瞬でその場の空気を一変させ、辺りを包み込む。暗闇の中で、マッチを中心に、やわらかな光の球体が浮かび上がる。

大きな音は必要ない。

光の中に包まれると、様々なイメージが浮かび上がる。重くふたをしてあった井戸の底から、次々に飛び出してくる。


和牛の脂で吐き気がした。今私に必要なのは、このマッチたることだ。