海馬

db4o2007-10-15

2時間も時間があったので、暇でもつぶすかなと思って買ったのがこの、「海馬」。13、14日は久しぶりの同窓会で宮崎へ。母校を訪ねて、地鶏食って、焼酎飲んで、朝までバカ騒ぎ。学生時代と変わらない。それからほとんど寝ずに翌早朝には日南線に乗って、ばあちゃんのいる志布志へ。顔見せて、墓参りして、昼飯食って、とんぼ返り。と、そんなこんなで溜まっていた疲れが、目次立ち読みした途端に吹き飛んだ!

あとから調べてみると、どうやら数年前によく売れた本だったらしいので、大分遅ればせながら読んだことになる。それにしてもこの本、現代版の哲学書ではないか。しかも実際の人生に役に立つ、素晴らしい本だ。

「空は自由だなあ」と憧れた少年時代。中学では航空大学校の入試問題を研究し始め、関係のあるやつしか勉強しなかった中・高・大(2年まで)。運良く最短で合格して、最年少で過ごした航空大学校時代。同僚のリタイヤに憤慨して皆で酒飲み過ぎて、おれ滑走路にスリッパ置き忘れたな。サッカーで骨折してボルト入れて飛んだ。レーダー誘導の予測にはまって、いかに管制官の指示を事前に予測して準備できるかが出来るようになった結果、こりゃコンピューターでやった方がいいなあ、なんてがっかりしたな。卒業時、就職氷河期で、オイルショック以来の珍事、卒業時に一握りしか就職できない異常事態になったな。結局その後希望者は吸収されたが、いろんな疑問が沸いてきて、おれは2ヵ月後には既に戻る気無くなった。

疑問ってのは、安全が最重要視される職種だから、「自由」なんてなく、果たしておれがやる職業なのかってことだった。エアラインのパイロットがいろいろ新しいこと果敢にチャレンジする人だったら、おれでも乗りたくないもんな。

そういうおれの精神を形成したのは、江戸時代に国学となった朱子学の対極にある陽明学だ。高杉や西郷、おれの好きな河井など、幕末の志士は陽明学に影響されたのが多く、そんなやつらに憧れて、おれも陽明学に傾倒していった。礼儀作法などの外面から内面を形作るという朱子学に対し、心を鏡のように磨いておけば、内面から外面が形作られるというものだ。あまりにも自由度が高く、つかみどころが無いので、ユングの心理学で補足したもんだ。

卒業後、これまでやってきたことの対極にあるもの、営業をいろいろやった。そんな中で仲良くなる社長達が出来、データベースを中心にしたソフトウェアではかなりの能力が発揮できることが分かってきた。そうだ、マイケル・デルみたいにがんばろうって思ってた。それから27で独立した。振り返ると20代は手当たりしだいいろいろやったもんだ・・・。

そして30では、db4objectsと一緒に仕事をするようになり、db4oデータベースに専念するようになる。何といってもこんなちっぽけな会社なのに、5大陸の人間がいて、カンファレンスをやると40カ国もの人が集まるから好きだ。

もう一つ30で始めたのはトランペット。不思議とこれまではマイルスデイビスのマニアなだけで、10年以上やろうとは一度も思わなかった。今は毎日青山公園で練習、右脳の刺激がたまらない、まさに中毒になっている。

こうして見てみると、まさに”海馬”に飼いなされたおれの人生か・・・。河井さんがこんなことをよく言ったもんだと言われている。

「世間一般で心と思うのは、真の心ではない。今世間で心というのは、殺しぬいて仕舞って見ないと心で無いものを心として物を想像するのであるから、曲がった定規で物を裁つようなものである。裁てば裁つほど曲がる。この本源から着手していかなければ善いことをしても、皆上辺の事になってしまう。」


「海馬」の中ではこれが科学的な根拠を持って証明されているように読める。改めて河井さんに感謝したい。


ところで、脳が情報を溜めたり処理して取り出す仕組みは、どう見ても今日のデータベースやファイルシステムとは大きく異なる。マクロで見ると、インターネットは脳の神経細胞のようには見える。どのような形になるかは分からないが、神経細胞のようなデータベースを作りたいものだ。